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少量の茹で汁とペコリーノで和える工程のイメージ

シェフの流派

塩は「適量」、水は「ケチる」としか書かれていない

Italia Squisitaのカチョ・エ・ペペ原典レシピに、湯量や塩分の数値は一つも出てこない。塩は「適量」、水は「avara(ケチる)」とだけ。乳化は常に火を止めたまま。アマトリチャーナは油を使わず強火でグアンチャーレを炒める。湯量と塩に数値がないのはカチョ・エ・ペペのほうだけ。同じ「原典版」2本を分解する。

公開 PASTAFONIA編集部
目次
  1. 一人のシェフではなく「誰と誰を並べるか」で見せるメディア
  2. 湯量と塩だけ数値がない:塩は「適量」、水は「ケチる」
  3. 油は使わない、強火で一気に:アマトリチャーナ原典版
  4. まとめ
  • 原典版郷土の老舗シェフが受け継いだ料理の核を見せる
  • 創作版別のシェフが現代的な解釈を同じ題材で示す
  • 並べて読む一媒体の主張でなく、二つの技法差を比べる

Italia Squisitaの単位は一人の流派ではなく、原典と創作の対比である。

一人のシェフではなく「誰と誰を並べるか」で見せるメディア

Italia Squisitaは個人シェフのチャンネルではなく、毎回著名シェフを招いて同じ料理を作らせ、技法を比較するイタリアの料理メディアです。カチョ・エ・ペペでは、ローマの老舗トラットリア「アルマンド・アル・パンテオン」のClaudio Gargioliによる「originale(原典)」と、Cristina Bowermanによる「gourmet(創作)」を対比させる構成で紹介しています。アマトリチャーナも同様に、Gabriele Perilliの原典版とAngelo Troianiの創作版が並びます。このサイトでは原典版の2本を工程分解の対象にしています。編集部の見立てでは、同じ料理を対比の型で見せるこのフォーマット自体が、Italia Squisitaを「ローマ4大パスタの参照元」として扱われやすくしている理由です。

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  • 控えめな湯量は数値化せず、デンプンを濃くする方向を示す
  • 適量の粗塩濃度の指定がなく、自宅では換算が必要になる
  • 火なしの乳化ペコリーノと茹で汁を液状だが濡れない状態へ

数値の空白を残しつつ、少ない湯と完全オフヒートの方向は明確である。

湯量と塩だけ数値がない:塩は「適量」、水は「ケチる」

Gargioli版の特徴は、数値ではなく感覚語で語られる工程の多さです。粗塩は「適量(q.b.)」、水は「avara(ケチる=控えめ)」とだけ表現され、湯量や塩分濃度の数値は出てきません。ローマの伝統系レシピに共通する語り口だと見られます。

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胡椒はペペ・ネロ・クベベ(クベバ胡椒)大さじ1を使い、手順では粒のまま小さめのフライパンでローストするとされています(材料表の表記は「粗挽き」で、出典内で表記が割れています)。粒の「真珠」が半透明になり始めたら油が出てきた合図で、吸水紙で冷ましてから乳鉢で粗く搗きます。全部を粉状にせず一部を粒のまま残すのが特徴です。

乳化はソース用のフライパンを火から下ろした状態でスタートします。おろしたペコリーノ150gと茹で汁少量を溶き、搗いた胡椒を加え、アルデンテのパスタを合わせて、常に火を止めたまま丁寧にマンテカーレします。Italia Squisitaのレシピ文では「すべてが液状のまま、しかし濡れていない状態を保つ、ここが一番難しい」と書かれています。ペコリーノはスパゲッティ600gに対して150g(麺100gあたり25g)で、油脂は一切使いません。カチョ・エ・ペペの流派の中では中位の量です。

自分の鍋の湯量に換算したい場合は、%から塩の量を出した上で、原典版の「控えめ」に寄せて調整するのが実務的です。他のシェフの分量と比べたい場合はカチョ・エ・ペペの比較ページにまとまっています。

  • 豚を強火で焼く追加の油なしでグアンチャーレを色づける
  • 少量のワイン大さじ一だけで蒸らし、トマトをゆっくり煮る
  • 火を消してチーズ一分早く上げた麺へペコリーノを練り込む

豚は強火、トマトは弱く、チーズは火を消す三段階で仕上げる。

油は使わない、強火で一気に:アマトリチャーナ原典版

Perilli版のレシピには玉ねぎもニンニクも登場しない、伝統ローマ派の代表例です(不使用の是非についての言及はなく、材料表からの読み取りです)。グアンチャーレ150gを長い短冊状に切り(スライスの最初の数枚は捨てる指定)、油を足さず強火(fuoco vivo)でこんがり色づくまで加熱します。低温でじっくり脂を出す流派とは真逆の方向性です。

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白ワインは大さじ1のみ蒸らし用に使い、ホールトマト400gを加えて塩で調え、最後に唐辛子1本を入れてソースを「piano piano(ゆっくり)」煮ます。Pasta Grammar版は麺160gに白ワイン60ml。麺100gあたりに直すとPerilli版は約3ml、Pasta Grammar版は約37mlで、桁が違います。

仕上げは、指定茹で時間の1分前にスパゲッティ500gを湯切りし、直接ソースのフライパンへ。火を消した状態でペコリーノ100gを加えながら数分マンテカーレします。麺100gあたり20gで、このサイトで分解したアマトリチャーナの中では最もチーズが多い部類です。

グアンチャーレの脂の出し方は流派によって強火派とじっくり派に分かれます。他シェフとの違いを見たい場合はアマトリチャーナの比較ページを参照してください。

  • カチョ・エ・ペペクベバ胡椒と、常に火を止めた乳化が核になる
  • アマトリチャーナ油なし強火の豚と、少量の白ワインが核になる
  • 共通の終点どちらも直火を止めてマンテカーレする

二つの原典版は前工程が違っても、最後はオフヒートでつながる。

まとめ

Italia Squisitaのカチョ・エ・ペペとアマトリチャーナは、どちらも「火を止めてから仕上げる」マンテカーレを軸にしている点で共通しています。カチョ・エ・ペペはクベバ胡椒と「常に火を止めたまま」の乳化、アマトリチャーナは油なし強火のグアンチャーレとワイン大さじ1が原典版らしさです。カチョ・エ・ペペは数値化されていない工程が多いので、まずは「originale」の語りをそのまま再現し、感覚をつかんでからレシピビルダーで他の流派と組み合わせてみるのがおすすめです。

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登場するシェフ

出典

  1. Cacio e pepe secondo Claudio Gargioli(Italia Squisita レシピページ)
  2. L'amatriciana secondo Gabriele Perilli(Italia Squisita レシピページ)
  3. Pasta Grammar「Bucatini all'Amatriciana」
  4. Italia Squisita 公式YouTubeチャンネル

Italia Squisitaカチョエペペアマトリチャーナマンテカーレローマ料理

隣の蘊蓄

横断比較

おろしチーズは17gから50g:ローマ3皿を貫く3つの軸

カチョエペペのおろしチーズは麺100gあたり17gから50gまで、流派で3倍近く違う(ファビオ版はこれとは別にクリームチーズ50gを加えるため総量では最多)。カルボナーラ・アマトリチャーナと材料は別物でも、チーズの量・豚の脂・乳化の起点という同じ3軸で分岐しているだけだ。

食材

モッツァレラは0mg、48ヶ月のパルミジャーノは2220mg

ペコリーノ・ロマーノDOPは羊乳100%でおろし用は最短8ヶ月、パルミジャーノ・レッジャーノDOPは牛の生乳で最短12ヶ月。産地も熟成も法律で決まっているのに、日本の棚に並ぶ「パルメザンチーズ」にはその縛りがない。乳の種類・熟成の長さ・粒の細かさという3つの軸から、サイト内の全レシピを貫くチーズの使い分けを追う。

食材

日本の規格に「エキストラバージン」という等級は存在しない

IOCは遊離酸度0.8%以下と官能パネルでエキストラバージンを定義する。一方、日本のJAS 0523:2024にあるのは「オリーブ油」と「精製オリーブ油」の2区分だけだ。発煙点をめぐる誤解、喉を刺すオレオカンタール、品種が決める辛味の幅、そして乳化。本稿で比較する既存30皿のうち22皿に入っている油を、規格・科学・レシピの三方向から追う。