ひと皿から、少し遠くへ。Recipes, people & good things.
具を炒めて和える工程と、麺を炒め合わせる工程のイメージ

横断比較

「炒めるのは具だけ」:落合務のナポリタンは麺に火を入れ直さない

ファビオは麺そのものをフライパンで炒め合わせ、リュウジも麺を焼いて香ばしさを出すが、落合務は火を止めてから和えるだけで麺自体は炒めない。5流派を麺の太さ・ケチャップの扱い・炒め方で比べると、分岐点は「煮詰めて濃くするか、伸ばして軽くするか」に集約される。

公開 PASTAFONIA編集部
目次
  1. 太麺のファビオ、太麺推奨のリュウジ、細麺で逆を行く落合務
  2. ケチャップは、煮詰める派と伸ばす派に割れる
  3. 「炒めるのは具だけ」、落合務は麺に火を入れ直さない
  4. よくある失敗と流派別の対策
  5. まとめ

再生するとYouTubeの埋め込みプレーヤーを読み込みます。YouTubeで開く

所要時間4流派の実値。同じ値は縦に重ねています
13.2分17.9分22.5分27.1分31.8分Chef Ropia(小林諭史): 15分CR落合務: 15分TO小倉知巳: 20分TOリュウジ: 30分R

「落合流は、炒めるのは具だけ」とNHKきょうの料理のレシピ紹介文にあります。ファビオが麺そのものをフライパンで炒め合わせ、リュウジも麺を焼いて香ばしさを出すのに対し、落合務は火を止めてから茹でたてのパスタを和えるだけです。ここに麺の太さと、ケチャップを煮詰めるか伸ばすかが連動します。この記事では5流派を、麺・ケチャップ・炒め方の3点で並べます。

  • 太麺を長茹でファビオは太麺を長めに茹で、もちもち感を狙う。
  • 太麺を推奨リュウジは太さを固定せず、太めの麺を勧める。
  • 細麺で和える落合務は細麺を選び、麺を炒めず仕上げる。

麺の太さは、仕上げに炒めるか和えるかと連動する。

太麺のファビオ、太麺推奨のリュウジ、細麺で逆を行く落合務

ファビオは2.2mmの太麺90gを通常より長い12分半茹でて、もちもち食感を狙います。リュウジは太さを指定せず、公式レシピに「パスタはもっと太いものでも!」、書き起こしのPoint欄に「太めのパスタがおすすめ」と太麺を推奨し、軽く湯切りします。一方、落合務は1.4mmの細麺で、1人あたり80g(2人分160g)。リュウジの100g、ファビオの90gと比べても細く少なく、太麺派とは逆の選択です。茹で時間・塩分濃度は、同ページの「ゆで方の基本」で湯1Lに1%の塩、袋の表示時間より1〜2分短く、と共通の基本として示されています。細麺を選ぶ理由の記載はありません。ただし落合務はパスタ自体を炒めないため、炒めで水分が飛ばない前提の選択と読めます。

小倉知巳は主役をスパゲッティでなくフジッリ60gに置き換え、塩分1.5%の湯で茹でます。Chef Ropiaは下茹でせず、フライパンの中でトマトジュース400mlと一緒に乾麺80gを煮ます。

  • 煮詰めるケチャップを具へ絡め、酸味が落ち着くまで加熱する。
  • 伸ばす茹で汁を同量ほど加え、火を止めて口当たりを整える。
  • 使わない調理済みトマトソースで、別の酸味と濃度を作る。

同じ赤いソースでも、濃縮・希釈・不使用に分かれる。

ケチャップは、煮詰める派と伸ばす派に割れる

リュウジは「味付けはケチャップだけ」を看板に、大さじ4を弱火で具材と炒めて酸味を飛ばし、具にまとわりついたら火を止めます(公式レシピには「味が足りなければコンソメを入れる」の補足もあります)。ファビオは自家製ケチャップ150ccを使い、麺を戻して黒胡椒とバターで絡めてから後がけで炒め合わせます。書き起こしサイトの編集部は「焼きそばのように炒めて旨味を凝縮させるのがポイント」と要約していますが、これは本人の発言ではありません。

詳しい解説を読む

落合務は伸ばす側です。ケチャップ大さじ2に茹で汁大さじ2を加えてのばし、火を止めます(パスタが茹で上がっていなければごく弱火で保温します)。Chef Ropiaはトマトジュースを「煮詰まって焦げ付いてくるまで放置」してヘラで裏返し、ケチャップを絡めて水を足しながら好みの固さにします。小倉知巳はケチャップを使わず、調理済みのトマトソース80gとパプリカのオイル漬け大さじ1で作ります。

  • 具だけ炒める火を止め、茹でたて麺とチーズ、バターを和える。
  • 麺も炒める麺をソースへ戻し、焼くことで香ばしさを加える。
  • ソースを先にソースを煮て完成させ、最後に麺と追い油を合わせる。

麺への再加熱の有無が、とろみと香ばしさを分ける。

「炒めるのは具だけ」、落合務は麺に火を入れ直さない

「落合流は、炒めるのは具だけ」とNHKきょうの料理のレシピ紹介文にあります。玉ねぎ100g・ボンレスハム塊120g・マッシュルーム5個・ピーマン2個を炒め、火を止めてから茹でたてのパスタとパルメザンチーズ30gを和え、最後にバター10gを加えてからめる方式で、「トロッとした口当たり」を標榜します。

詳しい解説を読む

対してファビオは麺そのものをフライパンで炒め合わせ、リュウジも軽く湯切りした麺を入れて「よく炒め混ぜる」と書き起こしにあり、「フライパンにパスタを入れた後、焼いて香ばしさを出したほうがよい」とPoint欄にあります。Chef Ropiaは煮詰めて焦げ付かせる工程そのものが特徴です。小倉知巳はトマトソースを弱火で2分煮込んでからフジッリを加え、濃度がつきすぎた場合だけ茹で汁で調整し、最後は火を止めてオリーブオイルを回しかける、イタリアン式の「ソースを先に完成させて和える」やり方です。

具材はウインナー(リュウジ・Chef Ropia)、ソーセージ(ファビオ)、ハム(落合務)、ベーコン(小倉知巳)と割れます。リュウジは「断面が広いほうがうまみが出るため斜め切りにする」と切り方まで指定します。

  • 酸味が残る弱火で具に絡むまで、または焼き付けるまで煮詰める。
  • 麺がべたつく水分を飛ばすか、加える茹で汁を少量にとどめる。
  • チーズがダマ火を止めてからバターとチーズを一気に和える。

酸味、水分、温度を別々に直すのが失敗回避の近道。

よくある失敗と流派別の対策

ケチャップが酸っぱく残るのは煮詰め不足です。リュウジは弱火で具にまとわりつくまで、ファビオは焼きつけるまで加熱します。

麺がベタつくのは水分過多です。落合務は茹で汁大さじ2でのばし、味をみて塩けが薄ければ茹で汁、濃ければ水を少々足すという、味の濃さの調整を指示しています(水分量の調整としての記載はありません)。Chef Ropiaは逆に水分を飛ばしきってから水を足します。

チーズがダマになるのは加熱しすぎです。落合務は火を止めてからパルメザンとバターを和えます。

  • もちもち太麺を長めに茹でるファビオの型が基準になる。
  • 濃いケチャップ弱火で具へまとわせるリュウジの型が向いている。
  • とろりと和える麺を炒めない落合務の型で、焦げを避けて仕上げる。

欲しい食感から、麺・ソース・再加熱の型を選べる。

まとめ

太麺でもちもちにしたいならファビオの12分半茹で、ケチャップだけで濃くしたいならリュウジの弱火煮詰め、パルメザンでコクをつけつつ麺を焦がしたくないなら落合務の「炒めるのは具だけ」。5流派の工程分解はナポリタンの比較ページで並べられ、工程ごとに組み合わせるならレシピビルダーの使い方から始めてください。

ここで触れた道具・食材

この皿を作る

登場するシェフ

出典

  1. リュウジ「至高のナポリタン」書き起こし(TubeRecipe)
  2. リュウジ「至高のナポリタン」公式レシピ(バズレシピ)
  3. ファビオ「レストランの味を再現【ナポリタン】」動画をもとにした記事(howtocook.jp)
  4. 小倉知巳「フジッリで作るナポリタン」書き起こし(TubeRecipe)
  5. Chef Ropia「ナポリタン」書き起こし(TubeRecipe)
  6. 落合務「ナポリタン」(NHKきょうの料理)
  7. 落合務 講師紹介(NHKきょうの料理)

ナポリタンケチャップ喫茶店太麺粉チーズ

隣の蘊蓄

食材

イタリアにトマトが着いてから、パスタに乗るまで242年かかった

記録に残る最古のイタリアのトマトは1548年10月31日、フィレンツェ郊外の農園からピサのコジモ1世へ届いた籠。パスタとトマトソースが同じ皿に載った最初の記録は1790年。マルコ・ポーロの麺は1929年にアメリカの業界誌が作った話で、サンマルツァーノは2011年時点で米国市場の推定95%が非正規品。トマトという素材を、出典の残っている事実だけで縦に貫く。

食材

日本の規格に「エキストラバージン」という等級は存在しない

IOCは遊離酸度0.8%以下と官能パネルでエキストラバージンを定義する。一方、日本のJAS 0523:2024にあるのは「オリーブ油」と「精製オリーブ油」の2区分だけだ。発煙点をめぐる誤解、喉を刺すオレオカンタール、品種が決める辛味の幅、そして乳化。本稿で比較する既存30皿のうち22皿に入っている油を、規格・科学・レシピの三方向から追う。